拡張機能の権限を読む。インストールのときだけ見ても足りない
拡張機能の権限には、警告が出ないものがあります。広い権限を一度許すと、自動更新で黙って増えることも。権限の読み方と、会社で棚卸しし、制限する方法。
ブラウザの拡張機能は、ページの中身とログイン状態に触れられます。生成AIを名乗る拡張機能はこの1年でかなり増えました。この記事では、権限の読み方と、会社として棚卸しし、制限する方法をまとめます。
先に結論を書きます。インストールのときに権限を見るだけでは足りません。警告が出ない権限があり、さらに、一度広い権限を許すと、あとから黙って増えることがあるからです。
権限は2種類ある
拡張機能の設定ファイルには、権限を書く場所が2つあります。
- ホスト権限。どのサイトに触ってよいか。すべてのサイトとも、特定のドメインだけとも指定できます。
- API権限。ブラウザのどの機能を使ってよいか。タブの一覧、Cookie、スクリプトの実行、ダウンロードなど。
危ないのは組み合わせです。すべてのサイトへのホスト権限があると、その上でスクリプトを実行し、Cookie を読むことができます。入力欄に打った内容も、ログイン中のセッションも、同じ拡張機能から見えます。
警告が出ない権限がある
拡張機能を入れるとき、何を許すのかの警告が出ます。ただし、すべての権限に警告があるわけではありません。Chrome の公式な権限一覧を見ると、警告文が空欄の権限があります1。
| 権限 | できること | 警告 |
|---|---|---|
| すべてのサイトへのホスト権限 | あらゆるサイトのデータの読み取りと変更 | 出る |
| tabs | 開いているタブの URL やタイトルの取得 | 出る |
| nativeMessaging | 端末に入っているアプリとのやりとり | 出る |
| clipboardRead | コピーや貼り付けした内容の読み取り | 出る |
| cookies | Cookie の読み取りと書き換え | 出ない |
| scripting | ページにスクリプトを注入する | 出ない |
| webRequest | 通信の監視と変更 | 出ない |
Cookie を読む、ページにスクリプトを注入する、通信を改変する。どれも重い操作ですが、単体では警告が出ません。危険がホスト権限の側に集約されているからです。
警告は重なるとまとめられます。公式の説明では、タブの警告は、拡張機能がすべてのサイトへの権限も要求している場合には表示されません2。広い権限が1つあると、細かい警告は消えます。
一度許すと、あとから黙って増える
ここがこの記事で一番伝えたいところです。
公式には、警告を伴う新しい権限が追加されると、ユーザーが承認するまで拡張機能は無効化されると書いてあります。ところが Chromium 側の実装の説明を読むと、比べているのは権限そのものではなく、警告メッセージです。新しい権限がすべて、警告のないものか、すでに付与済みの権限にまとめられるものなら、拡張機能は無効化されません3。
つまりこういうことです。すでにすべてのサイトへの権限を許していれば、あとから Cookie やスクリプト実行の権限が追加されても、再承認は求められません。自動更新で入ります。
インストールのときに審査した拡張機能が、半年後に同じものである保証はありません。
実際に何が起きたか
正規の開発者が乗っ取られた例2024年12月、データ保護製品 Cyberhaven の拡張機能が改ざんされました。従業員がフィッシングを受け、拡張機能の公開権限を持つ外部アプリを承認してしまったのが入口です。ログイン画面は本物だったため、二段階認証は効きませんでした。悪意のある版は約25時間配布され、40万人以上が対象でした。同じ手口で他の拡張機能も改ざんされています4。
AI を名乗る拡張機能の例2025年12月、AI のサイドバーを名乗る拡張機能2本が、利用者の AI との会話全文と、開いている全タブの URL を30分ごとに外部へ送っていたと報告されました。合計のインストール数は90万を超え、うち1本にはストアの推奨バッジが付いていました。同意画面には、匿名の分析データを送ると書かれていました5。
2つ目が厄介なのは、ストアの審査を通り、推奨バッジまで付いていたことです。ストアに出ていることは、安全の根拠になりません。
AI を名乗る拡張機能に限った調査もあります。100万台を超える企業端末のデータを分析した報告によると、AI 拡張機能は既知の脆弱性を含む割合が高く、16.31% でした。拡張機能全体では 10.8% です。Cookie へのアクセスは3倍、リモートのスクリプト実行は2.5倍。また12か月で権限を増やした割合は6倍だったとされています6。
端末で確認する
アドレス欄に chrome://extensions と入れると、入っている拡張機能の一覧が出ます。各拡張機能の詳細を開くと、サイトへのアクセスを三つから選べます。拡張機能をクリックしたときだけ、特定のサイトだけ、すべてのサイト。下げられるのなら、下げてください7。
Chrome ウェブストアのヘルプでは、権限をリスクの高さで分けて説明しています。高い側は、パソコンと閲覧したウェブサイト上のすべてのデータ。中間は、閲覧したすべてのウェブサイト上のユーザーデータや、一部のウェブサイト上のユーザーデータです7。
会社として制限する
Chrome には管理者向けのポリシーがあります。Google Workspace の管理コンソールからも設定できます。
| やりたいこと | 使うもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 全部止めて、許したものだけ入れる | ExtensionInstallBlocklist を全体にかけ、ExtensionInstallAllowlist で例外を並べる | インストール済みのものも無効化される |
| 業務で使うものを全員に配る | ExtensionInstallForcelist | ユーザーは削除も無効化もできない |
| 特定の権限を要求する拡張機能を一括で止める | ExtensionSettings の blocked_permissions | 全体の既定設定としてだけ有効。個別の拡張機能には指定できない |
| 入れるのは許すが、特定のサイトでは動かないようにする | ExtensionSettings の runtime_blocked_hosts | 指定したサイトでのスクリプト注入、Cookie アクセス、通信の改変を止める。上限100件 |
権限で止められるのが、この中では最も強いやり方です。拡張機能の名前を追いかけなくて済み、新しいものが出ても同じ基準で扱えます。
特定のサイトだけ守りたい場合は runtime_blocked_hosts が使えます。人事システム、顧客管理、社内の Wiki など、拡張機能に読ませたくないサイトを列挙します。ただし100件までなので、全部は入りません。優先順位を付けて選ぶことになります。
棚卸しのときに見る順番
- すべてのサイトへのホスト権限を持っている拡張機能を洗い出す
- そのうち、業務で必要なものを残し、残りはサイトアクセスを狭める
- AI を名乗る拡張機能を別枠で数える。何台に、どれが入っているか
- 公開元を見る。会社のドメインか、フリーメールのアカウントか
- 入れてよいものの基準を、名前ではなく権限で書く
- 遷移を見る仕組みを作る。インストール時だけではなく、増えたときに気づけるように
最後の1つが抜けがちです。この記事の前半で見たとおり、権限はあとから増えます。棚卸しを一度やって終わりにすると、半年後には別の状態になっています。
Sources
- 1Declare permissions の権限一覧Chrome for Developers、2026.09.132026-09-13 確認。cookies、scripting、webRequest は警告文が空欄
- 2Permission warningsChrome for Developers、2026.09.132026-09-13 確認。警告の省略規則
- 3PermissionsChromium、2026.09.132026-09-13 確認。更新時に比較されるのは警告メッセージ
- 4Targeted supply chain attack against Chrome browser extensionsSekoia.io、2025.01.22侵害された拡張機能の数は出典によって幅がある
- 5Malicious Chrome extensions steal ChatGPT and DeepSeek conversationsOX Security、2025.12.30
- 6Browser Extension Security Report 2026LayerX Security、2026.04.01100万台超の企業端末のデータ。数値は公式の紹介ページ経由
- 7拡張機能の権限についてGoogle Chrome ウェブストア ヘルプ、2026.09.132026-09-13 確認
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