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生成AIへの誤送信が起きたとき。発覚から30日までの手順

個人情報を送ってしまったら、期限は発覚した日から動き始めます。確証がなくても報告の対象になり、消しても過去には遡りません。判断ではなく手順で動くための記事です。

誤送信は起きます。起きたときに要るのは、判断ではなく手順です。個人情報が含まれていれば、法律で期限が決まっていることがあり、その期限は発覚した日から動き始めます。

やることは4段階です。最初の1時間で、入力を止め、記録を残し、責任者に上げる。当日中に、国への報告が要る事故かどうかを決める。要るなら、3〜5日以内に分かっている範囲で報告し、30日以内に全項目を報告する。削除の依頼は、これらと並行して進めます。

従業員が生成AIに送ってはいけない情報を送ってしまったとき、誰が何をいつまでにやるか。根拠は個人情報保護法と、個人情報保護委員会のガイドラインです。法令の解釈は会社の状況で変わるので、自社の手順に落とすときは法務の確認を取ってください。

最初の1時間は、止める、残す、上げるで足りる

やることは3つです。

止める。そのアカウントやチャットへの追加の入力を止めます。ガイドラインは、発覚時より被害が広がらないようにすることを最初の措置としています1

残す。消さないでください。当事者があわててチャットを削除すると、何を送ったかが分からなくなります。画面を保存し、ログを確保してから、次の段階で削除します。IPAの手引きも、不用意な操作で記録を消さないようにと書いています2

上げる。責任ある立場の人に直ちに報告します1。誰に上げるかは、事前に取扱規程などに書いておく必要があります3。ここで時間を使うと、後の期限がすべて短くなります。

当事者から聞くのは3点です。いつ、どのサービスに、どんな内容を送ったか。正確でなくて構いません。この3点があれば、次の判定に進めます。

当日中に、報告が要る事故かどうかを判定する

まず、送った内容の中身を見ます。顧客名簿や人事ファイルのように、検索できる形で管理している個人情報を、法律は個人データと呼びます。送った内容に個人データが含まれていて、次の4つのどれかに当たる場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務になります45

類型何件から
病歴や犯罪歴など、要配慮個人情報を含む1件でも病歴、健診結果、障害、犯罪歴
不正利用で財産的被害のおそれ1件でもカード番号、送金や決済のIDとパスワード
不正の目的によるもの1件でも従業員の持ち出し、外部からの不正アクセス。この場合だけ確報の期限が60日
本人の数が1,000人を超える超える可能性があれば顧客リストのファイルをアップロード

ここで大事なのは、確証がなくても対象になることです。判断は、その時点で分かっている事実から、起きた可能性がどれだけあるかで行います。ガイドラインはこう書いています6

漏えい等が発生したおそれについては、その時点で判明している事実関係からして、漏えい等が疑われるものの漏えい等が生じた確証がない場合がこれに該当する。

送ったファイルに健診結果が入っていたかもしれない。その段階で、すでに対象です。中身を確かめてから、と待っていると期限を過ぎます。

もう1つ。期限の起点は、会社のどこかの部署が知った時点です7。情シスに連絡が来た日ではありません。部署の誰か1人が知れば、その部署が知ったことになります19。送った本人が気づいた時点、上司が気づいた時点が起点です。

当日中に、対象かどうかを法務が決め、決めた根拠を残します。

削除の依頼は、判定と並行して進める

報告が要るかどうかとは別に、送った内容の削除を進めます。記録を保存してからです。

サービス誰が消せるかシステムから消えるまで
ChatGPT本人。Business は管理者も。Enterprise は管理者が Compliance API 経由で[23]30日以内[8]
Gemini本人。Workspace アカウントは管理者の設定に従う[24]個人アカウントでは、保存オフでも72時間。人がレビューした会話は最長3年残る[9]
Claude本人。Enterprise は保持期間を管理者が設定[25]30日以内[10]
Microsoft Copilot(職場アカウント)本人[26]。管理者は Purview で検索して削除削除後、次の処理まで1〜7日[11]

削除は過去に遡りません。すでに学習に取り込まれた分や、人によるレビューを経た分は残る場合があります。法的な保全が掛かっている分も残ります8。Copilot は、保持ポリシーやホールドが掛かったメールボックスでは、それを外すまで消えません11。消せば済む、という前提で報告の要否を判断しないでください。設定と削除の詳細は、会話を学習に使わせない設定の記事にまとめてあります。

3〜5日以内に速報を出す

報告対象の事故なら、知った時点から速やかに、分かっている範囲で報告します。この最初の報告が速報です。ガイドラインの目安はおおむね3〜5日以内です7。全部分かってからではなく、その時点で把握していることだけで足ります。

報告先は、原則として個人情報保護委員会の報告フォームです12。金融や電気通信など、権限が事業所管大臣に委任されている業種は、その大臣に報告します。委任先の一覧は毎年更新されるので、報告前に最新のものを確認します12。ただし、漏れたのが自社の従業員の雇用管理情報や株主の情報なら、業種に関係なく委員会へ報告します13

報告する項目は9つです。概要、漏れた項目、本人の数、原因、二次被害の有無、本人への対応、公表の状況、再発防止策、その他14。最初の1時間で当事者から聞いた3点が、このうちの概要と項目と原因になります。

顧客から預かったデータを送ってしまった場合は、自社が委託先の立場です。このときは委員会ではなく委託元、つまりその顧客に通知します。目安は同じく3〜5日以内です15。通知すれば自社の報告義務はなくなり、その後は顧客が行う報告に協力します15

本人への通知は、状況に応じて速やかに行う

状況に応じて速やかに、本人に通知します5。郵送かメールが基本です。連絡先が分からないなど通知が難しい場合は、事案の公表や、問い合わせ窓口の設置で代えられます16。公表そのものは義務ではありません。通知の代わりに行う場合を除き、二次被害を防ぐために望ましいときに行います19

送ったのが従業員の情報なら人事、顧客の情報なら顧客対応の部門が動きます。文面は法務と広報が見ます。ここで情シスの役割は、事実を正確に渡すことです。

30日以内に確報を出す

知った日から30日以内に、9項目すべてを報告します。これが確報です。不正の目的によるものなら60日以内です17。日数は土日祝を含めて数え、知った日が1日目です。30日目が土日祝や年末年始の閉庁日に当たるときは、その休日の翌日が期限です18。合理的な努力をしても分からない項目は、分かった時点で追完します。

速報の時点で9項目が揃っていれば、1回で確報を兼ねられます18

生成AIへの入力が漏えいに当たるかは、まだ決まっていない

従業員が生成AIに個人データを入力した行為を漏えいと見るかどうかについて、個人情報保護委員会の直接の見解はまだありません。ガイドラインのQ&Aにも、生成AIという語は出てきません19

手がかりはあります。Q&Aは、メールを誤送信した場合について、相手が中身を見ないうちに削除したと確認できれば漏えいに当たらないが、確認できなければ漏えいまたはそのおそれに当たり得る、としています19。生成AIの提供元が中身を扱っていないと自社で確認できる場合は限られます。

あるのは2023年6月の注意喚起です。本人の同意なく個人データを含む内容を入力し、それが回答の出力以外の目的で扱われる場合、法に違反する可能性がある、というものです20。学習に使われない設定なら報告不要、とはどこにも書かれていません。

だから、迷ったら対象として扱うのが安全です。4類型に当たらない場合でも、任意の報告はできます。報告フォームでは、4類型に非該当として出します21

なお、2026年7月に公布された改正法で、本人通知の緩和や速報の一部免除が予定されています22。速報の免除は、認定個人情報保護団体などの第三者に体制と手順の確認を受けていることが前提です。本人が1人の誤送付は、確報を一定期間ごとにまとめて出せるようになる予定です22。施行は原則として公布から2年以内で、日付はまだ決まっていません。この記事は現行法で書いています。

起きる前の準備で、最初の1時間の大半が終わる

  • 誰に最初に上げるかを、取扱規程に書いてある
  • 4類型の判定を、法務が当日中にできる体制がある
  • 自社が権限委任の対象業種かどうかを、最新の一覧で確認してある
  • 報告フォームのURLを控えてある
  • 使っているAIサービスごとに、管理者が削除できるかどうかを把握している
  • 誰が、いつ、どのサービスに、何を送ったかを、記録から引ける
  • 誤送信の連絡先を従業員に周知してある。文例は別の記事に

最後の2つが、実際にはいちばん効きます。自己申告が早く、記録から事実を引ければ、最初の1時間でやることの大半が終わっています。逆に、誰が何を送ったかを調べるところから始めると、速報の期限はすぐに来ます。

Sources

  1. 1個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)個人情報保護委員会2026.06.143-5-2 漏えい等事案が発覚した場合に講ずべき措置
  2. 2中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引きIPA2026.06.01中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版 付録8
  3. 3個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A個人情報保護委員会2025.07.01Q6-4
  4. 4個人情報の保護に関する法律施行規則e-Gov 法令検索2026.09.13第7条。確認日
  5. 5個人情報の保護に関する法律e-Gov 法令検索2026.09.13第26条。確認日
  6. 6ガイドライン(通則編)3-5-3-1個人情報保護委員会2026.06.14報告対象となる事態。おそれの考え方
  7. 7ガイドライン(通則編)3-5-3-3個人情報保護委員会2026.06.14速報。知った時点と、概ね3〜5日の目安
  8. 8Chat and file retention policies in ChatGPTOpenAI2026.08.18
  9. 9Gemini アプリのアクティビティGoogle2026.08.10
  10. 10How long do you store my organization's data?Anthropic2026.07.01
  11. 11Search for and delete Copilot data in eDiscoveryMicrosoft Learn2026.06.19
  12. 12漏えい等の対応と報告個人情報保護委員会2026.09.13確認日。報告フォームへの導線
  13. 13権限委任について個人情報保護委員会2026.09.13確認日
  14. 14個人情報の保護に関する法律施行規則 第8条第1項e-Gov 法令検索2026.09.13報告事項9つ
  15. 15ガイドライン(通則編)3-5-3-5個人情報保護委員会2026.06.14委託元への通知による報告義務の免除
  16. 16ガイドライン(通則編)3-5-4-5個人情報保護委員会2026.06.14本人への通知が困難な場合の代替措置
  17. 17個人情報の保護に関する法律施行規則 第8条第2項e-Gov 法令検索2026.09.13確報の期限。30日、不正目的は60日
  18. 18ガイドライン(通則編)3-5-3-4個人情報保護委員会2026.06.14確報。日数の数え方と、速報で兼ねられる場合
  19. 19ガイドラインに関するQ&A(令和7年7月1日更新)個人情報保護委員会2025.07.01Q6-2、Q6-24、Q6-33。生成AIの語は本文に出てこない
  20. 20生成AIサービスの利用に関する注意喚起等個人情報保護委員会2023.06.02
  21. 21ガイドラインに関するQ&A Q6-18個人情報保護委員会2025.07.01報告対象事態に該当しない場合の任意の報告
  22. 22令和8年改正個人情報保護法について個人情報保護委員会2026.09.13確認日。2026年7月17日公布、施行日は未定
  23. 23Enterprise privacy at OpenAIOpenAI2026.01.08
  24. 24Generative AI in Google Workspace Privacy HubGoogle Workspace2026.09.13確認日
  25. 25Configure custom data retention controls for Enterprise plansAnthropic2026.09.13確認日
  26. 26Delete your Microsoft Copilot interaction historyMicrosoft Support2026.09.13確認日

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